#5-140515 丸野健一氏 (早稲田大学 基幹理工学部 応用数理学科)

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題目:非線形波動と自己適合動的格子スキーム
講師:丸野健一氏 (早稲田大学 基幹理工学部 応用数理学科)
日時:2014年5月15日(木)16:30~
場所:63号館1階数学応数合同会議室
概要:
 可積分系(ソリトン方程式)の可積分性を保つ離散化は、1970年代中盤の広田良吾氏とMark Ablowitz氏による先駆的な研究を契機として、物理学、幾何学、代数学、代数幾何学、組み合わせ論、数値計算など様々な分野と結びつき発展してきた。
 広田氏の提案した離散化手法を基盤にしてこれまで離散化されていなかった解に特異性を持つようなソリトン方程式(例えばCamassa-Holm方程式やHarry Dym方程式)の可積分性を保つ離散化を行うと、 大変形が生じる領域に自動的に細かいメッシュを自動生成していく差分スキーム(自己適合動的格子スキーム, self-adaptive moving mesh scheme)が導出されることを我々は示したが、講演ではその自己適合動的格子スキームの構成法と数理的からくりについて詳しく解説する。
 一例として、短パルス方程式と呼ばれる非線形光学において導出された方程式を取り上げる。これは多ソリトン解をもち、Lax対を持つ可積分な非線形波動方程式であるが、短パルス方程式の自己適合動的格子スキームも多ソリトン解を持ち、Lax対を持つ。WKI 形式と呼ばれるLax対を持つソリトン方程式を可積分性を保ちながら離散化すると、自己適合動的格子スキームを導出することができる。自己適合動的格子スキームの背後にはホドグラフ変換と呼ばれる保存量と深く関連する座標変換があり、離散化した保存則の保存密度が自己適合動的格子スキームの格子間隔になる。このことによって自己適合動的格子スキームは非常に精度のよい数値計算法となる。
 講演では自己適合動的格子スキームを用いた数値実験例をいくつか紹介する。また、ソリトン方程式は微分幾何学的な視点で捉え直すこともできるが、離散微分幾何学(差分幾何学)的な視点から離散化されたソリトン方程式を捉え直せば自己適合動的格子スキームが自然に導出できることを解説する予定である。時間があれば、ソリトン方程式以外の(非可積分な)非線形偏微分方程式の自己適合動的格子スキームの構築についても紹介したい。

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